多角化戦略とは?関連多角化と非関連多角化の判断基準を解説
多角化戦略は既存事業とは異なる製品・市場に進出する戦略です。関連多角化と非関連多角化の違い、ルメルトの分類、シナジーの評価方法、失敗パターンを解説します。
多角化戦略とは
多角化戦略(Diversification Strategy)とは、企業が既存事業とは異なる新しい製品・サービスや市場に進出することで成長を追求する戦略です。アンゾフのマトリクスでは最もリスクが高い成長方向に位置づけられています。
多角化戦略の理論的基盤は、イゴール・アンゾフが1957年に発表した「成長ベクトル」の概念に遡ります。その後、リチャード・ルメルトが1974年の博士論文で多角化パターンと企業業績の関係を大規模に実証分析し、関連・限定型の多角化が最も高い業績を示すことを発見しました。
多角化の理論的発展に大きく貢献したのが、リチャード・ルメルトの研究です。ルメルトは1974年に、多角化のパターンと企業業績の関係を大規模に実証分析し、多角化の「仕方」によって業績が大きく異なることを発見しました。
コンサルタントにとって多角化戦略は、クライアントの成長戦略を検討する際に「どの方向に、どの程度、どのような関連性で」多角化すべきかを判断するための重要なフレームワークです。
構成要素
多角化戦略の主要な分類と構成要素は以下の通りです。
関連多角化
既存事業と技術、顧客、流通チャネル、ブランドなどの経営資源を共有できる分野への多角化です。シナジー効果が期待でき、既存の強みを活かせるため、成功確率が比較的高いとされます。ルメルトの研究では、関連・限定型(関連する少数の事業に集中)が最も高い業績を示しました。
非関連多角化
既存事業との関連性が低い分野への多角化です。コングロマリット型とも呼ばれます。財務的なリスク分散や余剰資金の投資先確保が目的ですが、事業間のシナジーが乏しく、経営の複雑性が増すリスクがあります。
ルメルトの多角化分類
ルメルトは多角化のパターンを専業型、本業型、関連型(関連・限定型と関連・拡散型)、非関連型の4つに分類しました。関連・限定型の業績が最も高く、非関連型の業績が最も低いという結果が得られています。
シナジーの源泉
多角化のシナジーは、販売シナジー(共通の顧客・チャネル)、生産シナジー(共通の製造技術・設備)、投資シナジー(共通のR&D・設備投資)、経営シナジー(経営ノウハウの共有)の4つに分類されます。
| 多角化の類型 | 特徴 | 業績傾向(ルメルト) |
|---|---|---|
| 関連・限定型 | 少数の関連事業に集中 | 最も高い |
| 関連・拡散型 | 多数の関連事業に展開 | 中程度 |
| 本業型 | 本業中心に一部多角化 | 中程度 |
| 非関連型 | 関連性の低い事業に展開 | 低い |
実践的な使い方
ステップ1: 多角化の必要性を評価する
既存市場での成長余地を分析した上で、多角化が本当に必要かを評価します。既存事業の深掘りで十分な成長が見込める場合は、無理に多角化する必要はありません。
ステップ2: 自社の転用可能な経営資源を棚卸しする
技術、ブランド、顧客基盤、人材、ノウハウなど、新規事業に転用できる経営資源を棚卸しします。コア・コンピタンスの観点から、自社の強みが最も活きる多角化の方向を探ります。
ステップ3: シナジーの実現可能性を精査する
候補となる多角化先との間で、どのようなシナジーが期待できるかを具体的に精査します。「シナジーがありそう」という漠然とした期待ではなく、定量的にシナジーの規模を推定してください。
ステップ4: 参入方法を選択する
多角化の実現手段として、自前での新規事業立ち上げ、M&A、合弁事業、戦略的提携などを比較検討します。スピード、リスク、投資規模、組織統合の難易度を総合的に判断します。
活用場面
- 中期経営計画の策定: 新規事業の方向性と優先順位を決定します
- M&A戦略の立案: 買収先との関連性とシナジーを評価します
- 事業ポートフォリオの設計: 事業間の関連性と全体最適を考慮します
- 新規事業の企画: 自社の強みを活かせる事業領域を特定します
- リスク管理: 事業構成の偏りによるリスクを評価します
注意点
多角化の検討段階ではシナジーを過大評価しがちです。シナジー実現のコスト、経営資源の分散リスク、撤退基準の事前設定を怠ると、多角化は企業価値を毀損する結果に終わります。
シナジーの幻想に惑わされない
多角化の検討段階ではシナジーを過大評価しがちです。実際にシナジーを実現するためには、組織間の連携や文化の統合など多大な労力が必要です。シナジーのコスト面も含めて評価してください。
経営資源の分散を避ける
多角化は経営資源を複数の事業に分散させます。既存事業の競争力維持に必要な投資が不足しないよう、資源配分のバランスに注意してください。
撤退基準を事前に設定する
多角化した事業がすべて成功するとは限りません。事前に撤退基準(投資回収期限、最低収益率など)を設定し、基準を下回った場合は速やかに撤退する判断ルールを決めておいてください。
まとめ
多角化戦略は、既存事業とは異なる製品・市場に進出することで成長を追求する戦略です。ルメルトの研究が示すように、関連性のある分野への集中的な多角化が最も高い業績につながります。自社の転用可能な経営資源を正しく評価し、実現可能なシナジーを精査した上で、多角化の方向性と参入方法を決定してください。