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アーンドスケジュールとは?EVMを時間軸で拡張するスケジュール分析手法を解説

アーンドスケジュール(ES)はEVMのスケジュール分析を金額ベースから時間ベースに拡張した手法です。SPI(t)、SV(t)の算出方法、EVMとの使い分け、完了予測への活用を解説します。

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    アーンドスケジュールとは

    アーンドスケジュール(Earned Schedule: ES)とは、EVM(アーンドバリューマネジメント)のスケジュール分析を金額ベースから時間ベースに拡張した手法です。2003年にWalt Lipke氏が発表した概念で、従来のEVMが抱えていたスケジュール指標の限界を克服する目的で考案されました。

    従来のEVMでは、スケジュール差異(SV = EV - PV)とスケジュール効率指標(SPI = EV / PV)という2つの指標でスケジュールの健全性を評価します。しかし、これらの指標はいずれも金額(コスト)で表現されるため、「何日遅れているのか」「いつ完了するのか」という時間軸の問いに直接答えることができません。さらに、プロジェクト終盤に近づくとEVがPVに収束するため、SVは0に近づき、SPIは1.0に収束します。つまり、プロジェクトが遅延しているにもかかわらず指標上は問題がないように見える、という致命的な欠陥が存在します。

    アーンドスケジュールはこの問題を解決するために、EVの値をPV曲線上の時間軸に投影する(マッピングする)ことで、スケジュールの遅れを「時間」で表現します。これにより、プロジェクト終盤でも信頼性の高いスケジュール分析が可能になります。

    構成要素

    アーンドスケジュールはES(アーンドスケジュール値)を起点として、SV(t)とSPI(t)という2つの時間ベース指標を導出します。

    アーンドスケジュール(ES)の概念図

    ES・SV(t)・SPI(t)の概念

    指標算出方法意味
    ES(アーンドスケジュール)現時点のEVがPV曲線上で達成された時点計画上「いつの時点」の進捗に相当するか
    AT(実績時点)プロジェクト開始からの実際の経過時間現在の時点そのもの
    SV(t)(時間ベーススケジュール差異)ES - AT正 = 前倒し、負 = 遅延(単位: 時間)
    SPI(t)(時間ベーススケジュール効率指標)ES / AT1.0以上 = 予定どおり以上、1.0未満 = 遅延

    ESの算出手順は次の通りです。まず、現時点のEVの値を確認します。次に、PV曲線上でそのEVと同じ値を示す時点を特定します。その時点がESです。PVの測定期間の間にある場合は線形補間を使って算出します。

    たとえば、プロジェクト開始から10ヶ月目(AT = 10)の時点でEVが800万円だったとします。PV曲線を確認すると、800万円に到達したのは計画上8.5ヶ月目です。この場合、ES = 8.5となり、SV(t) = 8.5 - 10 = -1.5ヶ月(1.5ヶ月の遅延)、SPI(t) = 8.5 / 10 = 0.85(計画の85%のペースで進行中)と算出されます。

    EVMとの比較

    項目EVM(従来)アーンドスケジュール
    スケジュール差異SV = EV - PV(金額)SV(t) = ES - AT(時間)
    スケジュール効率SPI = EV / PV(比率)SPI(t) = ES / AT(比率)
    単位金額(円・ドル)時間(月・週)
    終盤の信頼性低い(SVが0に収束)高い(遅延がそのまま反映)
    完了時予測困難(SVベースでは不正確)可能(時間ベースで予測可能)

    EVMのSVとSPIは、プロジェクト完了に近づくとEVがBAC(完了時予算)に収束する特性上、実態とかけ離れた数値を示します。一方、SV(t)とSPI(t)は時間軸に基づくため、プロジェクトのどの時点においても一貫した遅延度合いを表現できます。

    完了時スケジュール予測

    アーンドスケジュールの大きな利点は、プロジェクトの完了時期を時間ベースで予測できることです。

    予測指標算出方法意味
    EAC(t)(完了時見積り)PD / SPI(t)現在のペースが続く場合の予測完了時間
    EAC(t)(複合型)AT + (PD - ES) / SPI(t)残作業を現在のSPI(t)で割った予測
    VAC(t)(完了時差異)PD - EAC(t)計画工期と予測完了時間の差

    PDはPlanned Duration(計画工期)を指します。たとえば計画工期12ヶ月のプロジェクトでSPI(t) = 0.85の場合、EAC(t) = 12 / 0.85 = 約14.1ヶ月となり、約2.1ヶ月の遅延が見込まれると判断できます。

    実践的な使い方

    ステップ1: EVMの基盤を整備する

    アーンドスケジュールはEVMの拡張手法であるため、前提としてPV・EV・ACの測定基盤が整っている必要があります。WBSに基づくコスト見積りとパフォーマンス測定ベースライン(PMB)の作成が出発点です。EVMを運用していないプロジェクトにアーンドスケジュールだけを導入することはできません。

    ステップ2: 各測定期間のPV累積値を記録する

    ESの算出にはPV曲線上の各時点の累積値が必要です。月次または週次の測定期間ごとにPVの累積値をテーブルとして記録しておきます。この累積値がESを線形補間で求める際の基礎データとなります。

    ステップ3: ESを算出しSV(t)・SPI(t)を導出する

    測定期間ごとにEVを計上した後、そのEVの値がPV累積値テーブルのどの期間に該当するかを特定します。前後の期間の値を使って線形補間を行い、ESを算出します。算出式は以下の通りです。

    ES = C + (EV - PV(C)) / (PV(C+1) - PV(C))

    ここでCはEVがPV(C)以上かつPV(C+1)未満となる期間番号です。ESが算出できればSV(t) = ES - AT、SPI(t) = ES / ATを機械的に計算できます。

    ステップ4: 完了時期を予測し是正措置を判断する

    SPI(t)をEAC(t)の算出に用い、計画工期からの逸脱を定量化します。SPI(t)が一定期間にわたって1.0を下回り続ける場合は、スケジュール回復のための是正措置(リソース追加、スコープ調整、クラッシングなど)の検討が必要です。SPI(t)の推移をグラフ化してトレンドを監視することで、早期警戒が可能になります。

    活用場面

    • プロジェクト終盤のスケジュール監視: EVMのSPI/SVが収束して使えなくなる局面で、SPI(t)/SV(t)が正確な遅延度合いを提供します
    • 経営層へのスケジュール報告: 「1.5ヶ月遅れ」という時間ベースの表現は、金額ベースの「SV = -500万円」よりも直感的に理解されます
    • 完了時期の定量予測: EAC(t)により「現在のペースだと何月何日に完了するか」を定量的に示すことが可能です
    • 大規模プロジェクトのポートフォリオ管理: SPI(t)を共通指標として、異なる規模のプロジェクト間でスケジュール健全性を比較できます
    • アジャイルプロジェクトへの適用: スプリント単位の進捗をEV/PVとして計測し、リリース全体のスケジュール予測に活用する事例が増えています

    注意点

    EVMの基盤が不可欠

    アーンドスケジュールはEVMの上に構築される手法です。PV・EVの測定が正確でなければ、ESの算出結果も信頼できません。EVM自体の運用品質(ベースラインの精度、EVの測定方法の客観性)を担保することが、アーンドスケジュールの前提条件です。

    非線形なPV曲線では補間精度に注意が必要

    ESの算出は、隣接する測定期間間のPV変化を線形と仮定した補間に基づいています。PV曲線の傾きが測定期間内で大きく変動する場合(例: 特定月に大量の資材調達が集中する場合)、補間の精度が低下する可能性があります。測定頻度を上げるか、PVの変動が大きい期間を分割して記録することで対応できます。

    指標の閾値はプロジェクト特性に合わせて設定する

    SPI(t) = 0.9を閾値とするのか0.95とするのかは、プロジェクトの規模、業種、リスク許容度によって異なります。過去のプロジェクトデータを蓄積し、自組織に適した閾値を設定することが運用の質を高めます。画一的な基準をすべてのプロジェクトに適用するのは避けてください。

    まとめ

    アーンドスケジュール(ES)は、EVMのスケジュール指標がプロジェクト終盤に信頼性を失うという構造的な問題を、時間ベースの指標(SV(t)・SPI(t))で解決する手法です。EVの値をPV曲線上の時間に投影するという考え方はシンプルですが、「何日遅れているのか」「いつ完了するのか」という実務上最も重要な問いに直接答えられる点で、従来のEVMを大きく補完します。EVMをすでに運用しているプロジェクトであれば追加コストはわずかであり、スケジュール管理の精度を高める有効な選択肢です。

    参考資料

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