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クラウド移行戦略(6R)とは?移行アプローチの選定と実践を解説

クラウド移行戦略の6Rモデルは、既存システムをクラウドへ移行する際の6つのアプローチを体系化したフレームワークです。各アプローチの選定基準と実践手順を解説します。

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    クラウド移行戦略(6R)とは

    クラウド移行戦略の6Rモデルとは、オンプレミス環境のシステムをクラウドへ移行する際に採用できる6つのアプローチを体系化したフレームワークです。Gartnerが当初5つのアプローチ(5R)として提唱し、その後AWSがRetain(保持)を加えて6Rモデルとして広く普及させました。

    6Rは、Rehost(リホスト)、Replatform(リプラットフォーム)、Refactor(リファクタ)、Repurchase(リパーチェス)、Retire(リタイア)、Retain(リテイン)の6つで構成されます。移行対象のシステムごとに最適なアプローチを選定することが、クラウド移行プロジェクトの成否を左右します。

    コンサルティングの現場では、大規模な移行プロジェクトにおいてポートフォリオ全体を俯瞰し、各システムに適切な移行アプローチを割り当てるアセスメントが重要な支援領域です。

    :::box-point Gartnerが5Rとして提唱した移行アプローチを、AWSがRetainを加えて6Rモデルとして体系化しました。移行の複雑度とクラウド最適化の度合いに応じて、リフト&シフトからリファクタリングまで段階的に選択します。 :::

    クラウド移行戦略6Rモデルの構成

    構成要素

    6Rは移行の複雑度が低い順に以下の通り構成されます。

    アプローチ概要適用場面
    Rehostそのままクラウドへ移行(リフト&シフト)短期間での移行が求められるシステム
    Replatform一部をクラウドサービスに置換DBのマネージド化など最小限の最適化
    Refactorクラウドネイティブに再設計長期的な運用効率とスケーラビリティ重視
    RepurchaseSaaS等への乗り換え自社運用からSaaSへの切り替え
    Retireシステムを廃止不要になったシステムの整理
    Retainオンプレミスに残す移行の優先度が低いまたは制約があるシステム

    移行判断の4軸

    各システムの移行アプローチは以下の4軸で判断します。

    • 事業価値: そのシステムが事業にもたらす価値の大きさ
    • 技術的複雑度: アーキテクチャの複雑さと依存関係
    • 移行リスク: データ整合性や可用性への影響度合い
    • コスト効果: 移行コストに対するクラウド化のメリット

    実践的な使い方

    ステップ1: アプリケーションポートフォリオの棚卸し

    移行対象のシステム全体を一覧化します。サーバー台数、利用ユーザー数、データ量、依存関係を可視化し、ポートフォリオマップを作成します。

    ステップ2: アセスメントと分類

    各システムを4軸で評価し、6Rのいずれかに分類します。事業価値が高く技術的複雑度が低いシステムはRehostの候補です。戦略的に重要なシステムはRefactorを検討します。

    ステップ3: 移行ウェーブの設計

    分類結果を基に、移行の順序(ウェーブ)を設計します。リスクの低いシステムを初期ウェーブに配置して知見を蓄積し、後続ウェーブで複雑なシステムに取り組みます。

    ステップ4: パイロット移行の実施

    最初のウェーブを実行し、移行手順、ツールチェーン、運用体制の有効性を検証します。パイロット移行の成果と課題を分析し、後続ウェーブの計画に反映します。

    ステップ5: 本格移行とモダナイゼーション

    パイロットの知見を活かして本格移行を進めます。Rehostで移行したシステムも、段階的にReplatformやRefactorへ進化させるロードマップを策定します。

    活用場面

    データセンター契約満了に伴う大規模移行では、数百のシステムを6Rで分類し、3〜5年のロードマップとして段階的に移行を進めます。

    M&A後のシステム統合では、買収先のシステムポートフォリオを6Rで評価し、統合対象と廃止対象を仕分けます。

    DX推進の一環として、基幹システムのクラウドネイティブ化をRefactorアプローチで進め、ビジネスアジリティの向上を図ります。

    注意点

    :::box-warning 6Rの分類はあくまで出発点であり、最終決定ではありません。移行プロジェクトの進行に伴い、技術検証の結果や事業環境の変化に応じて分類を見直す柔軟性が必要です。 :::

    リフト&シフトの落とし穴

    Rehostは短期間で移行できる利点がありますが、クラウドの価値を十分に引き出せません。オンプレミスの構成をそのまま持ち込むとコストが増加するケースもあります。移行後の最適化計画を必ずセットで策定してください。

    依存関係の見落とし

    システム間の依存関係を十分に調査せずに移行すると、一方のシステムがクラウド、他方がオンプレミスという状態でレイテンシーやセキュリティの問題が発生します。依存関係マップの作成と移行順序の慎重な設計が不可欠です。

    まとめ

    クラウド移行戦略の6Rモデルは、移行対象のシステムに最適なアプローチを体系的に選定するためのフレームワークです。ポートフォリオの棚卸しとアセスメントを丁寧に行い、ウェーブ型の段階的移行で成功確率を高めることが重要です。

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