フューチャーサーチとは?多様なステークホルダーが共通基盤を見出す大規模対話手法
フューチャーサーチは60〜80名の多様なステークホルダーが2.5日間をかけて過去・現在・未来を探求し、共通基盤と行動計画を生み出す大規模対話手法です。5フェーズの進め方と成功条件を解説します。
フューチャーサーチとは
フューチャーサーチ(Future Search)とは、特定のテーマに関わる多様なステークホルダーが60〜80名規模で一堂に会し、2.5日間(通常は3日間の日程で実質2.5日)をかけて過去、現在、未来を体系的に探求し、全員が合意できる共通基盤と行動計画を生み出す大規模対話手法です。
1990年代にマーヴィン・ワイスボード(Marvin Weisbord)とサンドラ・ジャノフ(Sandra Janoff)が開発しました。この手法の最大の特徴は「対立の解決」ではなく「共通基盤の発見」に焦点を当てる点にあります。異なる立場のステークホルダーが同じ部屋で対話すると、通常は対立が先鋭化しますが、フューチャーサーチでは過去と未来の共有を通じて「意外にも多くのことで合意できる」という発見を促します。
ワイスボードとジャノフは「対立を解決しようとするな。共通基盤を見つけよ」という原則を掲げています。この原則は、対立が先鋭化しがちな多者間の対話において、建設的な成果を生むための核心的なアプローチです。
構成要素
5つのフェーズ
| フェーズ | テーマ | 時間帯 | 活動内容 |
|---|---|---|---|
| Phase 1 | 過去の振り返り | 1日目午後 | テーマに関する共通の歴史をタイムラインで作成する |
| Phase 2 | 現在の分析 | 1日目夜〜2日目午前 | 外部トレンドと内部実態をマインドマップで整理する |
| Phase 3 | 理想の未来 | 2日目午後 | 望ましい将来像をグループで描き、寸劇で発表する |
| Phase 4 | 共通基盤の発見 | 3日目午前 | すべてのグループに共通する合意点を特定する |
| Phase 5 | 行動計画 | 3日目午後 | 共通基盤に基づく具体的なアクションプランを策定する |
参加者構成の原則
フューチャーサーチでは「システム全体を1つの部屋に入れる」ことを重視します。テーマに関わるすべてのステークホルダーグループから代表者を招きます。たとえば地域の教育改革がテーマであれば、教員、保護者、生徒、行政、企業、NPOなど、6〜8のステークホルダーグループから各8〜10名が参加します。
実践的な使い方
ステップ1: スポンサーと計画チームを組成する
フューチャーサーチの成功には、組織の意思決定権を持つスポンサーの支援が不可欠です。スポンサーと、各ステークホルダーグループの代表者から成る計画チーム(8〜12名)を組成します。計画チームがテーマの設定と参加者の選定を行います。
ステップ2: 過去から現在を体系的に探求する
1日目は、テーマに関する過去30年の出来事をタイムラインに書き出す活動から始まります。個人史、テーマの歴史、世界の出来事を3つの軸で並べ、参加者間の共通体験を発見します。続いて、現在の外部トレンドをマインドマップで整理し、テーマに影響を与える力を全体で把握します。
ステップ3: 理想の未来を共に描く
混合グループ(異なるステークホルダーの混成)で「10年後の理想の姿」を描きます。文章ではなく、絵、寸劇、歌などのクリエイティブな表現を使います。各グループが全体に発表し、理想像の中に共通するテーマを見出していきます。
ステップ4: 共通基盤を確認する
すべてのグループの理想像から、全員が合意できる要素を抽出します。この段階で重要なのは「対立を解決しようとしない」ことです。合意できない点は「同意しないことに同意する」として脇に置き、合意できる点に集中します。
ステップ5: 行動計画を策定する
共通基盤に基づいて、参加者自身が「自分は何をするか」を宣言する行動計画を作成します。トップダウンの命令ではなく、自発的なコミットメントとして計画が生まれる点がフューチャーサーチの特徴です。
活用場面
- 地域開発やまちづくりで、住民、行政、企業など多様な関係者の合意を形成する場面に適しています
- 組織の中期経営計画策定で、部門横断の視点を統合したビジョンを構築する際に有効です
- 業界全体の課題(環境規制、人材不足など)に対して、競合他社を含む多様な関係者が協力して解決策を探る場面で活用されています
- 合併後の組織統合で、異なる企業文化を持つメンバーが共通の未来像を共有する手段として使えます
注意点
2.5日間の確保が必須
フューチャーサーチは短縮できません。2.5日間を連続して確保する必要があり、途中参加や途中退出は認められません。この時間的コミットメントが最大の導入障壁です。
参加者の多様性を妥協しない
特定のステークホルダーグループが欠けた状態で実施すると、「システム全体」を扱えず、生み出された行動計画の実効性が低下します。計画段階で必要なステークホルダーを特定し、確実に参加を確保します。
ファシリテーターの経験が求められる
60〜80名の大規模対話を2.5日間にわたってファシリテートするには、高度な経験とスキルが必要です。フューチャーサーチ・ネットワークが認定するファシリテーターに依頼するか、十分な研修を受けた内部人材を配置します。
フューチャーサーチの成果は、参加者が会議室を出た後のフォローアップに大きく左右されます。2.5日間で生まれた行動計画が日常業務に埋もれてしまわないよう、3か月後・6か月後のフォローアップ会議を事前に計画しておくことが重要です。
まとめ
フューチャーサーチは、多様なステークホルダーが過去・現在・未来を共に探求し、対立ではなく共通基盤に焦点を当てて合意と行動計画を生み出す大規模対話手法です。2.5日間という投資と綿密な準備が求められますが、複雑な社会課題や組織課題に対して、当事者自身が解決の主体となる強力なプラットフォームを提供します。