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エンベデッドファイナンスとは?組込型金融のビジネスモデル

エンベデッドファイナンス(組込型金融)は非金融事業者が自社サービスに金融機能を組み込むビジネスモデルです。BaaS基盤を活用した三層構造と事業機会を解説します。

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    エンベデッドファイナンスとは

    エンベデッドファイナンス(Embedded Finance)とは、非金融事業者が自社のサービスやプラットフォームに金融機能を組み込み、ユーザーに一体的な体験として提供するビジネスモデルです。日本語では「組込型金融」と訳されます。

    たとえば、ECサイトのチェックアウト画面で後払い(BNPL)を選択したり、配車アプリ内でドライバー向け保険に加入したりする体験がエンベデッドファイナンスの典型例です。

    従来、金融サービスは銀行や保険会社といった金融機関の専売事業でした。しかしAPI技術の発達とBaaS(Banking as a Service)基盤の登場により、金融ライセンスを持たない事業者でも金融機能を自社サービスに統合できるようになりました。

    構成要素

    エンベデッドファイナンスは、非金融事業者・BaaS基盤・金融機関の三層構造で成り立っています。

    エンベデッドファイナンスの三層構造

    非金融事業者(フロントレイヤー)

    エンドユーザーと直接接点を持つ事業者です。EC、SaaS、モビリティ、小売、不動産などの事業者がこのレイヤーに該当します。自社の顧客体験の中に金融サービスをシームレスに組み込みます。

    BaaS基盤(ミドルレイヤー)

    金融機能をAPIとして提供するプラットフォームです。決済、融資、保険、口座管理など、個別の金融機能をモジュール化して提供します。非金融事業者はこのAPIを呼び出すだけで金融機能を実装できます。

    金融機関(バックレイヤー)

    銀行免許や保険業免許などのライセンスを保有する機関です。規制対応や資金の裏付けを担い、BaaS基盤を通じて金融サービスの実体を提供します。

    エンベデッドファイナンスの主な領域

    領域概要事例
    決済(Embedded Payment)自社サービス内での決済処理EC内ワンクリック決済
    融資(Embedded Lending)購入時点での分割払い・融資提供BNPL、POS融資
    保険(Embedded Insurance)商品購入・サービス利用時の保険付帯旅行予約時の旅行保険
    投資(Embedded Investment)アプリ内でのおつり投資・ポイント投資家計簿アプリの投資機能
    銀行(Embedded Banking)自社ブランドの口座・デビットカード提供ネオバンクアプリ

    実践的な使い方

    ステップ1: 顧客体験上の金融ニーズを特定する

    自社の顧客ジャーニーを分析し、「お金に関する摩擦」が発生しているポイントを特定します。「購入をためらう瞬間」「支払い方法で離脱するタイミング」「保険や保証を別途手配する手間」などが候補です。

    ステップ2: BaaSパートナーを選定する

    特定したニーズに対応できるBaaSプロバイダーを選定します。APIの機能範囲、対応する規制要件、料金体系、導入実績、技術サポートの品質などが評価基準となります。日本国内ではGMOあおぞらネット銀行やInfoDeliver、海外ではStripe Treasury、Marqetaなどが代表的です。

    ステップ3: 段階的に導入しPDCAを回す

    まずは一つの金融機能から小規模に開始し、効果を検証します。決済領域から始めることが多く、成果が確認できたら融資や保険などに拡大していきます。KPIとしてはコンバージョン率、LTV(顧客生涯価値)、利用率などを追跡します。

    活用場面

    • ECプラットフォームにおけるBNPL(後払い)の導入
    • SaaS事業者による顧客向け融資サービスの提供
    • シェアリングエコノミーにおける即時決済と保険の組み込み
    • B2Bプラットフォームでの請求書融資(インボイスファイナンシング)
    • 不動産テックにおけるローン審査の自動化

    注意点

    規制対応を軽視しない

    金融機能を組み込む以上、金融規制への準拠は不可欠です。資金決済法、貸金業法、保険業法など、提供する金融サービスに応じた規制要件を確認し、BaaSパートナーとの責任分界点を明確にします。

    顧客体験の劣化に注意する

    金融機能の追加が顧客体験を複雑にするケースがあります。「申込フォームが長い」「審査に時間がかかる」といった摩擦が生じると、本来の事業にも悪影響を及ぼします。シームレスな体験設計が成否を左右します。

    収益モデルの持続性を検証する

    エンベデッドファイナンスの収益は、金融サービスの手数料やスプレッドに依存します。低金利環境や競合参入による手数料低下を想定し、収益モデルの持続性をストレステストしておくことが重要です。

    まとめ

    エンベデッドファイナンスは、非金融事業者がBaaS基盤を介して自社サービスに金融機能を組み込むビジネスモデルです。顧客体験上の金融摩擦を解消し、新たな収益源を創出する可能性を持つ一方、規制対応と体験設計の両立が成功の鍵となります。

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