コレスポンデンス分析とは?ブランドポジショニングマップの作成手法を解説
コレスポンデンス分析(対応分析)はクロス集計表の行と列のカテゴリを低次元空間に射影し、関連性を可視化する多変量解析手法です。ポジショニングマップの作成手順、結果の読み解き方、活用場面を解説します。
コレスポンデンス分析とは
コレスポンデンス分析(Correspondence Analysis)とは、クロス集計表の行カテゴリと列カテゴリの関連性を、低次元の空間(通常は2次元)に射影して可視化する多変量解析手法です。「対応分析」とも呼ばれ、日本の統計学では「数量化III類」と同等の手法として知られています。1960年代にフランスの統計学者ジャン=ポール・ベンゼクリ(Jean-Paul Benzecri)が体系化しました。
コンサルティングの実務では、ブランドイメージ調査や顧客満足度調査など、複数のカテゴリ間の関連構造を把握したい場面が頻繁にあります。たとえば「4つのブランド」と「6つのイメージ属性」のクロス集計表があるとき、数値の羅列だけでは各ブランドがどのようなイメージと結びついているかを直感的に把握することは困難です。
コレスポンデンス分析は、このクロス集計表の行と列の両方のカテゴリを同一の2次元マップ上にプロットし、近い位置に布置されたカテゴリ同士は関連が強い、離れたカテゴリ同士は関連が弱いという形で視覚的に表現します。この結果として得られるマップが、いわゆる「ポジショニングマップ」です。
構成要素
クロス集計表(分割表)
コレスポンデンス分析の入力データは、行と列にカテゴリカル変数(質的変数)を配置したクロス集計表です。各セルの値は、行カテゴリと列カテゴリの組み合わせの頻度(度数)や回答数を表します。
たとえば、ブランドイメージ調査であれば、行に「ブランド名」、列に「イメージ属性(高級感、親しみやすさ、革新性など)」を配置し、各セルにはそのブランドに対してそのイメージを選んだ回答者数が入ります。
カイ二乗距離
コレスポンデンス分析では、カテゴリ間の距離をカイ二乗距離(chi-squared distance)で測定します。通常のユークリッド距離ではなく、各セルの期待度数からの乖離に基づいて距離を計算する点が特徴です。これにより、回答数の絶対的な多寡ではなく、行と列のカテゴリ間の「関連の強さ」が反映されます。
固有値と寄与率(イナーシャ)
クロス集計表の情報を低次元空間に圧縮する際、各軸がどれだけの情報量を保持しているかを示す指標が固有値と寄与率です。コレスポンデンス分析では、全体の分散に相当する量を「イナーシャ(慣性)」と呼びます。
| 指標 | 定義 | 解釈 |
|---|---|---|
| 固有値 | 各軸が説明するイナーシャの大きさ | 値が大きいほど、その軸が多くの関連性の情報を捉えている |
| 寄与率 | 各軸の固有値を全イナーシャで割った値 | 第1軸と第2軸の累積寄与率が高いほど、2次元マップの信頼性が高い |
| 累積寄与率 | 第1軸から順に寄与率を足し合わせた値 | 70%以上を目安とし、低い場合は2次元での解釈に限界がある |
行プロファイルと列プロファイル
各行の度数を行合計で割った値が行プロファイル、各列の度数を列合計で割った値が列プロファイルです。コレスポンデンス分析は、これらのプロファイルの類似性に基づいてカテゴリを空間上に配置します。類似したプロファイルを持つカテゴリ同士はマップ上で近くに布置されます。
実践的な使い方
ステップ1: クロス集計表を作成する
分析対象となるクロス集計表を準備します。行と列のカテゴリ数はそれぞれ3つ以上あることが望ましく、セルに0や極端に小さい値が多い場合は結果が不安定になるため、カテゴリの統合や除外を検討してください。アンケート調査の場合は、複数回答形式の設問から作成したクロス集計表がよく用いられます。
ステップ2: 固有値と寄与率を確認する
分析を実行した後、まず各軸の固有値と寄与率を確認します。第1軸と第2軸の累積寄与率が70%以上であれば、2次元マップでデータの関連構造を概ね捉えられていると判断できます。累積寄与率が低い場合は、3次元以上での解釈や、元のクロス集計表に立ち返った検討が必要です。
ステップ3: ポジショニングマップを読み解く
2次元マップ上に行カテゴリ(例: ブランド)と列カテゴリ(例: イメージ属性)がプロットされます。読み解きのポイントは以下の通りです。
- 原点から離れたカテゴリほど特徴的な(偏った)プロファイルを持つ
- 原点に近いカテゴリは平均的な(特徴がない)プロファイルを持つ
- 同じ方向に布置された行カテゴリと列カテゴリは関連が強い
- 反対方向に布置されたカテゴリ同士は負の関連(対照的な関係)を持つ
ステップ4: クロス集計表と照合して解釈を検証する
マップから得られた解釈を、必ず元のクロス集計表の数値で裏付けます。マップは視覚的に分かりやすい反面、2次元に圧縮する過程で情報が失われている可能性があります。マップ上で近くに見えるカテゴリが実際のクロス集計表でも高い頻度を示しているか、数値で確認する手順を省略しないでください。
活用場面
- ブランドポジショニング分析: 自社と競合のブランドがどのようなイメージと結びついているかを可視化し、差別化戦略の立案に活用します
- 顧客セグメントとニーズのマッピング: 顧客属性(年齢層、職業など)と購買動機や利用チャネルの関連を一覧化し、セグメント別の施策検討に役立てます
- メディア接触パターンの分析: ターゲット層とメディア接触の関連を可視化し、広告出稿先の選定やメディアプランニングに活用します
- 商品カテゴリと購買行動の関係把握: 商品カテゴリと購入場所・購入頻度の関連構造を可視化し、チャネル戦略の検討材料とします
- 競合比較レポートの作成: 多数の評価項目と比較対象を1枚のマップに集約し、経営層への報告資料として直感的に伝わる形で提示します
注意点
行と列のプロット間の距離を直接比較しない
コレスポンデンス分析で最も多い誤解は、マップ上の行カテゴリと列カテゴリの「距離」を直接比較して「このブランドとこのイメージは近い」と断言してしまうことです。厳密には、行カテゴリ同士の距離、列カテゴリ同士の距離はそれぞれ解釈できますが、行と列の間の距離は同一の尺度では定義されていません。行と列が同じ方向に布置されていれば関連が強いという「方向」による解釈が正しいアプローチです。
累積寄与率が低い場合は解釈を控える
第1軸と第2軸の累積寄与率が50%を大きく下回る場合、2次元マップが元のデータの関連構造を十分に表現できていません。無理にマップから解釈を導くと誤った結論に至るリスクがあります。この場合は第3軸以降の情報も含めて検討するか、クロス集計表そのものに立ち返って分析してください。
カテゴリの統合・除外の判断が結果を左右する
出現頻度が極端に低いカテゴリをそのまま含めると、マップ上で不自然に離れた位置に布置され、全体の解釈を歪めることがあります。分析前にカテゴリごとの度数を確認し、基準値(たとえば全体の5%未満)を下回るカテゴリは統合または除外を検討してください。
因果関係を読み取らない
コレスポンデンス分析が示すのはカテゴリ間の「関連」であり「因果関係」ではありません。ブランドAと「革新性」が近い位置にあるのは、回答者がブランドAに革新性を感じている傾向があるという意味であり、ブランドAが革新的であることを証明しているわけではありません。
まとめ
コレスポンデンス分析は、クロス集計表のカテゴリ間の関連構造を2次元マップとして可視化する手法であり、ブランドポジショニングや顧客セグメントの分析において直感的な把握を可能にします。固有値と寄与率による信頼性の確認、行と列の距離解釈の制約の理解、元のクロス集計表との照合を実践することで、意思決定に資する正確な分析結果を導くことができます。
参考資料
- コレスポンデンス分析の活用事例を使ってわかりやすく解説 - NTTコム オンライン(コレスポンデンス分析の手順と活用事例を実務的な視点で解説)
- コレスポンデンス分析とは?手順や種類、注意点を解説 - インテージ(マーケティングリサーチにおけるコレスポンデンス分析の手順・種類・注意点を解説)
- コレスポンデンス分析 - マクロミル(マーケティングリサーチでのコレスポンデンス分析の位置づけと活用方法を解説)
- コレスポンデンス分析 | 統計用語集 - 統計WEB(コレスポンデンス分析の統計的な定義と基本概念を解説)