トーンオブボイスとは?ブランドの声調を統一する設計手法
トーンオブボイスはブランドや組織が一貫したメッセージを発信するための言語・声調の統一ガイドライン設計です。4象限マップを用いた分類と実践的な策定ステップを解説します。
トーンオブボイスとは
トーンオブボイス(Tone of Voice)とは、ブランドや組織がすべてのコミュニケーションで一貫して使用する「言葉遣い・声調・表現スタイル」のガイドラインです。略して「ToV」とも呼ばれます。
ブランドの個性は、何を言うか(メッセージ)だけでなく、どう言うか(トーン)によっても規定されます。同じ内容でも「ご確認ください」と「チェックしてみてね」では、受け手の印象はまったく異なります。トーンオブボイスは、この「どう言うか」を組織全体で統一するための設計手法です。
ニールセン・ノーマン・グループ(NN/g)は、トーンオブボイスを「ユーザーとの関係性を構築するための最も重要なUXライティング要素」と位置づけています。
構成要素
トーンオブボイスは、フォーマル/カジュアルと感情的/論理的の2軸で4つの象限に分類できます。
トーンの4要素
トーンオブボイスを定義する際は、以下の4つの要素を軸に検討します。
| 要素 | 定義 | 例 |
|---|---|---|
| 人称 | 語り手と読み手の関係性 | 「当社は」vs「私たちは」vs「弊社では」 |
| 語彙 | 使用する言葉の選択 | 専門用語の使用度、カタカナ語の許容範囲 |
| 構文 | 文の長さと構造 | 短文中心 vs 複文も許容、体言止めの使用 |
| 感情 | 表現に込める感情の度合い | 淡々と事実を伝える vs 熱意を込めて語る |
Doリストと Don’tリスト
トーンオブボイスガイドラインでは、推奨表現と非推奨表現を具体例で示すのが効果的です。
| Do(推奨) | Don’t(非推奨) |
|---|---|
| 「お困りの点はありませんか」 | 「不明点があれば問い合わせろ」 |
| 「3つのポイントをご紹介します」 | 「以下の事項を列挙する」 |
| 「一緒に解決していきましょう」 | 「自己責任で対処してください」 |
実践的な使い方
ステップ1: ブランドパーソナリティを定義する
まずブランドを「もし人間だったらどんな人物か」と擬人化して考えます。年齢、性格、話し方、価値観を具体的に言語化します。たとえば「30代後半、知的だが親しみやすい、専門用語を噛み砕いて説明するのが得意な先輩」のようにペルソナを設定します。
ステップ2: トーンの軸を設定する
4象限マップを使い、自社のトーンがどの位置にあるべきかを決定します。さらに「ユーモアの度合い」「敬語のレベル」「絵文字の使用可否」など、細かい軸も設定します。競合他社のトーンと比較し、差別化ポイントを明確にすることも有効です。
ステップ3: ガイドラインを文書化し浸透させる
決定したトーンを具体的な例文とともにドキュメント化します。チャネル別(Web、メール、SNS、社内文書)のトーン調整ルールも記載します。作成後はワークショップや研修を通じて、組織内に浸透させます。
活用場面
- コーポレートサイトやオウンドメディアのライティング統一
- カスタマーサポートの応対品質の標準化
- 社内文書・社外文書のトーン統一
- ブランドリニューアル時の言語アイデンティティ再設計
- 多拠点・多言語展開時のメッセージ一貫性の確保
注意点
硬直的なルールにしない
トーンオブボイスは「型」であって「枠」ではありません。すべての文章を同じパターンに当てはめようとすると、不自然で魅力のない文章になります。ガイドラインは「原則と例外」のセットで設計し、場面に応じた柔軟性を持たせます。
チャネルごとの調整を忘れない
同じブランドでも、プレスリリースとSNS投稿では適切なトーンが異なります。ガイドラインにはチャネル別のトーン調整ルールを組み込み、「基本トーン + チャネル別調整」の二層構造にします。
定期的な見直しを行う
市場環境や顧客層の変化に合わせて、トーンオブボイスも進化させる必要があります。年1回程度の見直しを計画し、形骸化を防ぎます。
まとめ
トーンオブボイスは、ブランドの「どう言うか」を組織全体で統一するための設計手法です。フォーマル/カジュアル、感情的/論理的の2軸で自社のポジションを定め、具体的な例文とDoリスト/Don’tリストでガイドラインを文書化することで、あらゆるチャネルで一貫したブランド体験を提供できます。