ダイアログマッピングとは?IBIS表記で議論を構造化する手法
ダイアログマッピングはジェフ・コンクリンが提唱した、会議中の議論をリアルタイムで構造化・可視化する手法です。IBIS表記の仕組みと実践ステップを解説します。
ダイアログマッピングとは
ダイアログマッピング(Dialogue Mapping)とは、会議や議論の内容をリアルタイムで構造化して可視化する手法です。CogNexus Instituteの創設者であるジェフ・コンクリン(Jeff Conklin)が2005年の著書『Dialogue Mapping: Building Shared Understanding of Wicked Problems』で体系化しました。
この手法の核となるのがIBIS表記(Issue Based Information System)です。IBISは1970年代にホルスト・リッテルとワーナー・クンツが考案した、議論を論点(Issue)・立場(Position)・論拠(Argument)の3要素で構造化する表記法です。
ダイアログマッピングは、特に「厄介な問題(Wicked Problem)」の議論に適しています。複雑で定義が曖昧な問題に対して、参加者の多様な視点を整理し、共通理解を構築することを目的とします。
構成要素
Issue(論点)
議論の出発点となる「問い」です。「新規事業にどの市場を選ぶべきか」「顧客離反率をどう改善するか」のような形で表現します。一つのIssueから複数のPositionが分岐します。
Position(立場・提案)
Issueに対する回答や提案です。「国内の中小企業市場に参入する」「東南アジア市場を狙う」のように、具体的な立場や案を示します。
Argument(論拠)
Positionを支持する根拠(Pro)または反対する根拠(Con)です。「市場規模が年率15%で成長している」「参入障壁が高く初期投資が大きい」のように、各立場の強みと弱みを明示します。
IBISの連鎖構造
IBISは階層的に連鎖します。あるArgumentから新たなIssueが派生することもあります。たとえば「初期投資が大きい」というArgumentから「資金調達をどうするか」という新たなIssueが生まれます。この連鎖によって、議論の全体像が枝分かれしながら展開されます。
実践的な使い方
ステップ1: ファシリテーターが共有画面を用意する
ダイアログマッピングでは、ファシリテーターがマッピング担当を兼ねます。プロジェクターやディスプレイに接続したPCで、参加者全員が見える状態にマップを表示します。専用ツール(Compendium、Miroなど)を使用すると効率的です。
ステップ2: 発言をリアルタイムでIBIS分類する
参加者の発言を、Issue・Position・Argumentのいずれかに分類して即座にマップに書き込みます。「それは論点ですね」「その意見はAさんの提案に対する反論ですね」のように、発言のIBIS上の位置づけをファシリテーターが判断します。
ステップ3: マップを振り返り合意を形成する
議論が一段落したら、マップ全体を俯瞰して確認します。各Positionに対するPro/Conの数と重みを比較し、議論が不足している箇所を特定します。最終的に、参加者全員でマップを確認しながら合意形成を行います。
活用場面
- 定義が曖昧で複雑な「厄介な問題」についての議論
- 利害関係者が多い会議での論点整理
- 戦略オプションの比較検討
- プロジェクトのスコープ定義における合意形成
- 議事録の代替としてのビジュアル記録
注意点
ファシリテーターのスキル依存が大きい
ダイアログマッピングの品質は、ファシリテーターのIBIS分類能力に大きく依存します。発言を即座に正しく分類するには訓練が必要です。まずは少人数の社内会議で練習してから、重要な会議に適用することを推奨します。
議論の速度とマッピングの速度のバランス
活発な議論では発言がマッピングに追いつかないことがあります。この場合、ファシリテーターが「少しお待ちください、今の論点を整理させてください」と一時停止を挟む勇気が必要です。
マップの複雑化に注意
議論が長時間にわたると、マップが巨大化して全体像を把握しにくくなります。適宜サブマップに分割するか、議論のフェーズごとにマップを区切ると管理しやすくなります。
まとめ
ダイアログマッピングは、IBIS表記を使って議論をIssue・Position・Argumentの3要素でリアルタイムに構造化する手法です。複雑な問題の議論において参加者の共通理解を構築し、論理的な合意形成を支援します。ファシリテーターのスキル向上が成功の鍵です。