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AIサミット(アプリシエイティブ・インクワイアリー・サミット)とは?強みから未来を描く変革手法

AIサミットは、組織の強みと成功体験を起点に理想の未来を共創するアプリシエイティブ・インクワイアリーの大規模実践手法です。4Dサイクルの進行方法、設計のポイント、コンサルタントが組織変革で活用する方法を解説します。

    AIサミットとは

    AIサミット(Appreciative Inquiry Summit)とは、アプリシエイティブ・インクワイアリー(AI)の手法を大規模な集団で実践する組織変革のアプローチです。数十人から数百人、場合によっては千人以上の参加者が2〜5日間にわたって集まり、組織の強みを起点に理想の未来を共創します。

    アプリシエイティブ・インクワイアリーは、1987年にデイビッド・クーパーライダーとスレシュ・スリバスタバがケース・ウェスタン・リザーブ大学で開発した組織開発手法です。従来の問題解決型アプローチとは異なり、「組織が最もうまくいっているときは何が起きているか」という肯定的な問いを出発点とします。

    AIサミットはこの手法をイベント形式にしたもので、組織のすべてのステークホルダー(従業員、顧客、パートナー、地域住民など)が一堂に会し、4Dサイクル(Discovery、Dream、Design、Destiny)を通じて組織の未来を描きます。コンサルタントにとって、大規模な組織変革やビジョン策定における強力なファシリテーション手法です。

    AIサミットの4Dサイクル 組織の強みを起点に、理想の未来を共創する変革手法 肯定的な テーマ選択 Affirmative Topic D1: Discovery 発見 強みや成功体験を インタビューで発掘する D2: Dream 強みが最大限に発揮された 理想の未来像を描く D3: Design 設計 理想の実現に向けた 仕組みや体制を設計する D4: Destiny 実行 具体的な行動計画を 策定し、実践に移す 問題解決ではなく「最良の状態」を起点にした組織変革アプローチ 全ステークホルダーが参加し、2〜5日間で4Dサイクルを一気に回す

    構成要素

    4Dサイクル

    AIサミットは4つのフェーズ(4D)で構成されます。

    フェーズ名称目的主な手法
    D1Discovery(発見)組織の強みと成功体験を発掘するペアインタビュー、ストーリーテリング
    D2Dream(夢)強みが最大限に発揮された未来像を描くビジョニング、コラージュ、スキット
    D3Design(設計)理想の実現に向けた仕組みを設計するプロボカティブ・プロポジション作成
    D4Destiny(実行)具体的な行動計画を策定し実践に移すアクションプランニング、コミットメント

    肯定的テーマ選択(Affirmative Topic Choice)

    4Dサイクルの前提として、探究の方向性を決める「肯定的テーマ選択」があります。「離職率の削減」ではなく「最高の職場体験を生み出す」、「コスト削減」ではなく「資源を最大限に活かす」のように、問題ではなく可能性に焦点を当てたテーマを設定します。テーマの設定が組織の探究の方向を決定するため、AIサミットの成否を左右する重要な要素です。

    サミットの特徴

    AIサミットが通常のワークショップと異なる点は、「全システムが部屋にいる(Whole System in the Room)」という原則です。意思決定に関わるすべてのステークホルダーが参加することで、サミットの場でリアルタイムに合意形成と行動計画の策定が可能になります。

    実践的な使い方

    ステップ1: テーマとステークホルダーを特定する

    AIサミットの準備段階で、探究のテーマと招待すべきステークホルダーを特定します。テーマは組織の戦略的な方向性に基づき、肯定的な表現で設定します。ステークホルダーは、組織の内外を問わず、テーマに関わるすべての関係者を含めます。

    ステップ2: Discovery(発見)を実施する

    ペアインタビュー形式で、参加者同士が互いの成功体験や組織の強みを語り合います。「この組織で最も誇りに思う瞬間は何ですか?」「最高の状態で働いているとき、何が起きていますか?」といった問いを通じて、組織の「ポジティブコア」を発掘します。インタビューの内容はテーブルごとに共有し、共通するテーマやパターンを抽出します。

    ステップ3: Dream(夢)からDesign(設計)へ展開する

    発見された強みを基に、理想の未来像を描きます。「3年後、この組織が最も活き活きとしている姿はどのようなものですか?」と問いかけ、ビジュアル表現やスキット(寸劇)で未来像を表現します。その後、理想を実現するための組織の仕組み、プロセス、制度をプロボカティブ・プロポジション(挑発的な提案文)として具体化します。

    ステップ4: Destiny(実行)で行動計画を策定する

    設計した内容を具体的な行動計画に落とし込みます。「誰が」「何を」「いつまでに」実行するかを明確にし、参加者が自発的にコミットメントを宣言します。サミットの場で行動計画がつくられることで、実行への移行がスムーズになります。

    活用場面

    • 大規模組織変革: 合併後の統合、組織再編、文化変革など、全社的な変革のキックオフとして活用します
    • 中長期ビジョン策定: トップダウンではなく全員参加で組織の将来ビジョンを描きます
    • 新事業・新サービス開発: 顧客やパートナーも含めたステークホルダーとの共創により、新しい価値を探索します
    • コミュニティ開発: 地域やコミュニティの将来像を住民参加で描く場面に適用します
    • 戦略的パートナーシップ構築: 複数組織間の協力関係の方向性を共同で描きます

    注意点

    問題を無視するわけではない

    AIは「ポジティブなことだけを話す」手法ではありません。課題や問題は、肯定的なフレームで再構成して取り扱います。「離職率が高い」という問題は「人が長く働きたいと思う組織とはどのようなものか」という探究に転換されます。この転換が表面的な言い換えにならないよう、深い理解が必要です。

    サミット後のフォローアップが不可欠

    数日間の高揚した体験の後、日常に戻ると行動計画が風化するリスクがあります。サミット後の定期的なフォローアップミーティング、進捗の可視化、成功事例の共有など、モメンタムを維持する仕組みを事前に設計してください。

    ファシリテーターのスキルが問われる

    大人数のサミットでは、複数のファシリテーターチームが必要です。AIの哲学と手法に精通したリードファシリテーターと、テーブルファシリテーターの連携が成功の鍵となります。ファシリテーターのスキル不足は、サミット全体の質に直結します。

    経営層のコミットメントを確保する

    サミットで生まれた行動計画の実行には、経営層の支援と資源の配分が不可欠です。サミットを開催する前に、経営層がサミットの成果を尊重し、実行を支援するコミットメントを得ておくことが重要です。

    まとめ

    AIサミット(アプリシエイティブ・インクワイアリー・サミット)は、組織の強みと成功体験を起点に、全ステークホルダーが参加して理想の未来を共創する大規模な変革手法です。4Dサイクル(発見、夢、設計、実行)を通じて、問題解決ではなく可能性の探究から組織の変革を推進します。コンサルタントとして、組織の潜在力を引き出し、自発的な変革のエネルギーを生み出すファシリテーション手法として活用してください。

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